☆ 相手から受けた暴力や脅迫の内容は何回ぐらい、どれくらいの強さだったのか、 詳しく書きます。
なるべく最近の暴力、 被害がひどかったもの、 病院受診した暴力を記入します。
「殴った」 とか 「あばれた」という表現がよく使われるのですが、 被害者が経験したことが これでは充分に伝わらないので、 具体的に表現します。
例えば
「右手を使って拳骨で2回、 私の顔と頭を殴った」
「髪の毛をつかんで後ろに強引に引っ張った」
「胸倉をつかまれ、壁にぐいぐい押し付けられた」
「瀬戸物の灰皿を私に投げつけた」
「ぶっ殺す」「死ね」
「ただで済むと思うな」
「殴られたいのか」
被害については、 その結果どういうことが起こったかを書きます。
例えば
「頬が脹れて赤くなり翌日は青黒いアザになり、頭も脹れて数日痛みが続いた」
「髪の毛が抜けて数日間はシャンプーできず、ブラシをすると痛みを感じた」
「胸倉をつかまれたとき、胸に擦り傷ができ赤くなった」
「灰皿は私には当たらず床に落ちて壊れたが、 タバコの灰が私の目に入ってしばらく目が開けられなかった」
「眠れなくなった」「絶望的な気持ちになった」「なにもやる気がなくなった」
「人に会いたくなくて外出が億劫になった」など
☆ 暴力の証拠として、 診断書を提出することはとても効果的です。
軽いケガであって も痕跡が残っていれば、 診断書はほとんどの医師が書いてくれます。 カルテを証拠として使うこともできます。
直接の身体への暴力や生命や身体に対する脅迫がない場合も、さまざまな虐待で ダメージを受け、結果としてPTSD や、心因反応、反応性うつ症状などを発症して 診断書を提出した被害者が「身体に対する暴力」として認められ発令された例が複数あります。
医療機関名や所在地を加害者に知られたくない場合があります。
実際、診断書で加害者に知られてしまって、待ち伏せされたり、その病院にかよえ なくなった人もいました。 裁判官によっては事情を汲んで相手方に医療機関名を伏せた例もありました。
「こういう事情があります」と説明して、被害者の要望を裁判官に伝えてみましょう。
私は相手方から、 次のような暴力や生命・身体に対する脅迫を受けました。
日時 2〇〇〇年〇8月〇日〇時ころ
1 場所
(○)自宅
( )他の場所
その内容 暴力をうけた部位や回数、脅迫の内容をなるべく具体的に記入します
何がきっかけで怒り出したのか今でも分からないのですが、夕食をとっている時、 夫がとつぜん私の頭を平手で強く叩きました。その衝撃で口の中を噛みました。
その暴力・脅迫による被害は次のとおりです。 (○) けがをした ( )しない
( )病院で治療を受けた
( ) 年 月
(○) 病院での治療は受けなかった
日付の診断書がある 写真などによる被害の記録がある
2 日時 2〇〇〇年 〇 月〇 日 〇時ころ
場所 (○)自宅 ( )他の場所
その内容
暴力をうけた部位や回数、脅迫の内容をなるべく具体的に記入します
些細なことで夫が怒り出し、テレビのリモコンを台所にいた私に投げつけました。
リモコンは右手の甲に当たりました。そのあと夫は「俺を怒らせるとどうなるのか 分っているのか」と私を脅しました。
その暴力・脅迫による被害は次のとおりです。 (○)けがをした( )しない
( )病院で治療を受けた
(○) 病院での治療は受けなかった
( ) 年 月 日付の診断書がある
(○)写真などによる記録がある
3 日時 2〇〇〇年 〇月〇日〇時ころ
その他の場所
(○) 自宅
その内容 暴力をうけた部位や回数、 脅迫の内容をなるべく具体的に記入します
私が「出て行く」と言って隣の部屋に行こうとしたら、夫が追いかけてきて右手で 私の右の肩をつかみました。私が振り払おうとしたら、次に私の右腕の上部を つかんで強く引っ張りました。私はふらついて倒れこみました。そうしたら 夫は倒れている私の左足の太ももを強く蹴りました。
その暴力・脅迫による被害は次のとおりです。 (○) けがをした ( )しない
(○)病院で治療を受けた(○) 2〇〇〇年〇 月〇日付の診断書がある ( )病院での治療は受けなかった ( )写真などによる記録がある
※ 1から3以外にも記載したい暴力があれば、 このページをコピーして使ってください。
☆ この項目は DV 法で「相手方からの暴力により生命、身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと思う理由」を記入することになっています。 保護命令発令のためには 重要な項目です。
しかし設問の意味が理解しにくいため「とても怖い」「不安でいっぱいになっている」 など、現在被害者が感じている気持ちを記入することが多いです。
むしろ加害者側に焦点を当てます。 どんな性格の人か、いままでどんな言動をして きたか、被害者が避難して以降の最近の加害者の動きなどを書きます。
例えば
「きれやすい性格」「執念深い」などの加害者の特徴。
「興奮すると自制心が無くなり暴力の歯止めが利かなくなることがある」
「人前でも私に暴力を振るったことがある」
「職場で暴力沙汰を起こしたことがある」など加害者の行為。
「逃げたりしたらどうなるか分かっているのか」 「どこまでも追いかけて探し出す」 など
加害者の言っていた言葉。
以前、家を出た時に待ち伏せしたり押しかけてきたことがあったら、 その事実。
避難してから実家や知人宅などに問い合わせをしたり、探りを入れるなどの行動があればそれを記入します。
☆ 実家や知人宅が危険にさらされるのを避けるため、すべての加害者の行動を申立書に書きこめないこともあります。
その事情は、申立書とは別に裁判官に伝えて危険性への理解を求めます。
☆ どこの配偶者暴力支援センターに相談したかを記入しなくてはならない申立書が多いのですが、被害者が一時保護中の場合には避難場所を自分で明らかにするような行為となり、危険が発生する可能性が大きく、記入できないことも多いです。 避難前に、元の住まいの警察署に相談した経過があれば一番いいのですが、避 難後にわざわざ加害者の居る場所の近くには行けません。
こうしたときは、なるべく避難先から離れた場所にある警察署やDV防止センターに相談するのもひとつの方法です。
4私は次のような理由から相手方が私に対して更に暴力を振るい生命、身体に重大な危害を加えるおそれが大きいと考えています。
夫は切れやすい性格で、怒りだすと歯止めがきかなくなることがあります。 避難してからも、私の携帯電話に「これでいいと思っているのか」「戻れ」と 留守電にメッセージを入れ、実家や知人宅にも電話をかけて私を捜しています。
だんだん暴力がエスカレートしてきているので、もし見つかればどんなことをされるかわかりません。
5.私は配偶者暴力相談支援センターや警察に相談したり、 援助や保護を求めました。
( )相談した事実はありません ( )相談した事実があります
相談していない場合、 宣誓供述書を提出します 相談した事実を以下に記入します
2〇〇〇年〇月〇日 (○)警察 ○○ 警察署
( )配偶者暴力相談支援センター
相談した内容
「私の場合もDVと考えていいんでしょうか」「またひどい 暴力を振るわれるかもしれないと不安です」と相談しました。
次のようなことをしてくれました
(○)保護命令についての説明
( )一時保護
その他
暴力があったら、110番通報するように言われました。
年 月 日 警察署 警察 ( )配偶者暴力相談支援センター
相談した内容
次のようなことをしてくれました
( )保護命令についての説明
( )一時保護
その他
☆ 子どもが加害者から虐待を受けていたことを中心に記入する例が多いのですが、 それだけではこの申立の項目としては不充分なのです。
☆ 結果として再び暴力の危険にさらされることに結びつく、子どもをめぐる加害者との緊張関係の根拠をなるべく具体的に書きます。
例えば加害者が子どもに執着していて、学校に問い合わせをしたり 「子どもを返せ」とメールをよこす等、子を連れ戻そうとしている状況にあること。
あるいは、子どもが過去に加害者から虐待されていて、もし連れ去られてしまったら被 害者がその状態を手をこまねいているわけにはいかないので、相手の所に行って子ど もを取り戻す行動をとらざるを得ないこと、などです。
☆ 子どもが 15 歳以上の場合は、 子ども本人が書いた同意書が必要になります。 同意 書の筆跡を確認することがあるので、子どものテストの答案やノート、手紙などを裁 判所に持参します。
☆ 子どもが中学生や高校生になっている場合、裁判官は「自分で逃げたり、対応する ことも可能となっているはずだから、 保護命令の必要は無いのではないか」としばしば考えます。
例えば子どもが大きくなっていても過去の経過から加害者には逆らえない関係になっていることがあります。また加害者と子どもの関係が険悪で衝突が起きる危険が大きく、衝突を防ぎ、子どもをかばうために、被害者が加害者と接触せざるをえないことなどそれぞれの事情を記入するといいと思います。
過去記事
【矯風会ステップハウス】支援者のためのハンドブック DV防止、保護命令申立(4)