愛知県弁護士会 岡村晴美弁護士に出された懲戒の議決書、その1（あと何件かあります）
令和3年(コ)第91号
議 決 書
懲戒請求者 個人 離婚事件当事者、子ども面会交流調停申立人 子どもの父親
対象弁護士 岡村晴美（登録番号34964）
事務所 愛知県名古屋市天白区平針2丁目808番地 ガーデンハイツ平針
弁護士法人名古屋南部法律事務所
上記懲戒請求事件について、当委員会は調査の上、次のとおり議決する。
主 文
対象弁護士につき、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
第1 事案の概要
事実及び理由
懲戒請求者は、 申立外 A子 (以下「申立外A子氏」という。 なお、 平成30年12月13日、第1審の両名の離婚・ 長女 (平成24年〇月〇日生) の親権者を申立外 A子と定める判決が上告棄却・不受理で確定。)との間で、名古屋家庭裁判所において、 長女の面会交流について審判が下され、 平成30年5月30日、 その審判が確定したものの、 令和2年11月8日を最後に、 長女が嫌がるということで面会交流が実施されないことな どについて、申立外A子の代理人である対象弁護士に対して懲戒請求をした事案である。
第2 懲戒請求者が本懲戒請求を求めた事由の要旨
1 対象弁護士は、 令和2年12月1日付けの通知書 (甲1、以下「本件通知書」とい う。)をもって、懲戒請求者に対し、 申立外A子の代理人として、長女についての面会交流の実施を一方的に取りやめた。
2 その後、申立外A子は、裁判所の面会交流の履行勧告を受け、かつ、 令和3年(家口) 第✗号の間接強制申立事件においては、 「長女に対し非監護親との面会交流を強いることは長女の心身に有害な影響を及ぼす恐れが大きいと認められて長女の心身に有害な影響を及ぼすことのないように配慮しつつ長女と債権者の面会交流を実現するために必要と考えられる債務者の行為を具体的に想定することは困難とまでは認 められない。」等の判示がなされ、 結局、 面会交流を実施しなければならない、 これを履行しないときは債務者は 債権者に対し、不履行1回につき2万円を支払え、との決定がなされ、 確定した。 しかし、 それでも申立外A子は面会交流を実施しない。
3 のみならず、 間接強制金の支払について、 長女の未払の養育費と対当額において相殺するとして、これを支払わない。
第3 対象弁護士の弁明の要旨
対象弁護士は、長女の面会交流に対する拒否感が強いことを尊重し、申立外A子の意向を踏まえ、誠実の職務を遂行してきた。本件通知書を発した後も直ちに面会交流の調停を申し立て、より適切な面会交流のあり方を模索しようと努力してきた。 また 間接強制 金と養育費の相殺も、 民法509条1項の相殺禁止 (悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務)に触れるわけではなく、 適法かつ有効である。 なお、 令和4年8月30日時点 においては、間接強制金はすべて支払済みである。
第4証拠の標目
1 懲戒請求者の提出分
甲第1号証
甲第2号証
甲第3号証
甲第4号証
甲第5号証
「この度」から始まる文書 (対象弁護士作成・ 2020年12月 1日付け)
「12月3日付」から始まる文書 (対象弁護士作成・ 2020年 12月8日付け)
「2021年2月17日付」 から始まる文書 (対象弁護士作成・ 2021年3月2日付け)
「6月の面会交流」 から始まる文書 (対象弁護士作成・ 2021 年7月1日付け).
「2021年3月2日書面返信の件」から始まる文書 (懲戒請求 著作成・2021年3月5日付け)
2 対象弁護士提出分
乙第1号証
乙第2号証
乙第3号証
乙第4号証
乙第5号証
乙第6号証
「2021年3月5日付」 から始まる文書 (対象弁護士作成・2021年3月8日付け)
「3月の面会交流」 から始まる文書 (対象弁護士作成・ 2021 年4月1日付け)
「4月の面会交流」から始まる文書(対象弁護士作成・ 2021 年5月2日付け)
「5月9日付のお手紙」から始まる文書 (対象弁護士作成 ・2021年5月12日付け)
「5月15日付のお手紙」から始まる文書 (対象弁護士作成・2021年5月24日付け)
「5月の面会交流」 から始まる文書 (対象弁護士作成・ 2021 年6月4日付け)
乙第7号証
乙第8号証
乙第9号証
乙第10号証
「7月4日付のお手紙」から始まる文書 (対象弁護士作成・ 2021年7月7日付け)
「7月の面会交流」から始まる文書 (対象弁護士作成・ 2021 年8月2日付け)
「2021年8月10日付のお手紙」から始まる文書 (対象弁護土作成・2021年8月12日付け)
「A子より、」 から始まる文書 (対象弁護士作成・ 2021年9月1日付け)
乙第11号証 決定書 (名古屋家庭裁判所令和3年(家口) 第1号間接強制申立事件)
乙第12号証 決定書 (名古屋家庭裁判所令和3年(家口) 第25号間接強制決定の変更の申立て事件)
乙第13号証 審判書(名古屋家庭裁判所・令和3年(家) 第213号面会交 流申立事件、同第776号親権者変更申立事件、 同第849号
面会交流申立事件)
乙第14号証 決定書 (名古屋高等裁判所・令和4年 (ラ)第32号面会交流審判、親権者変更申立却下審の案に対する即時抗告事件)
乙第15号証 スクリーンショット 「子どもを」 から始まるツイート (投稿者 「懲戒請求者」 2021年4月2 9日付け)
乙第16号証 スクリーンショット 「懲戒請求に」から始まるツイート (投稿者「懲戒請求者 2022年2月7日付け)
第5 当委員会の判断
1 当委員会の認定した事実と判断
懲戒請求者の主張する上記3つの懲戒請求の理由の事実関係には概ね争いがない。 令和3年(家口) 第✗号の間接強制申立事件においては、「債権者の面会交流を実現するために必要と考えられる債務者の行為を具体的に想定することは困難とまでは認められない。」 との判示はあるものの、それは事後的客観的な評価であり、当時の状況を前提として、 対象弁護士が長女の面会交流に対する強い拒否感及び申立外A子の意向を踏まえ、本件通知書をもって面会交流を拒絶したこと等については、 対象弁護士が誠実に職務を遂行してきたといえる。
また、間接強制金の法的性質については争いがあるものの、間接強制金が債権者に 帰属し、損害賠償に充当されることから、金額の決定を執行裁判所に委ねた法定の違約金と説明する見解も有力である(伊藤眞園尾隆司編 『条解民事執行法』(弘文堂、 2022年)1622頁)。 そうであるとすれば、間接強制金は、悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務となることはなく、これを受働債権とした養育費の相殺も 適法かつ有効と解されうるものであり、懲戒請求者の主張はいずれも理由がなく、 失当である。
2 結 語
よって、主文のとおり議決する。
令和5年7月27日
愛知県弁護士会綱紀委員会 第2部会 部会長 上田尚武
上記は謄本である
令和5年8月10日 愛知県弁護士会会長 小川 淳
