弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2023年11月号に掲載された弁護士の懲戒処分の公告・福井弁護士会・川上賢正弁護士の懲戒処分の要旨(日弁連異議)処分変更
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処分理由・相続事件の怠慢な事件処理
2002年度福井弁護士会会長
元の処分要旨
福井弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。
記
1 処分を受けた弁護士氏名 川上賢正 登録番号 20833 事務所 福井市宝永4-1-1 川上・野坂・安藤法律事務所
2 懲戒の種別 戒告 2023年9月19日 (日弁連異議申立 業務停止1月に変更)
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は、遺言執行者である相続人Aから委任を受け、不動産の換価等の遺言執行業務を行い、2016年8月にその業務を終了したところ、2018年夏頃から複数回にわたり、相続人Bの代理人弁護士から、被懲戒者の行った業務の処理内容について問合せがされ、翌年には、Aが新たに選任した代理人弁護士からも、遺言執行に関する資料の開示依頼がされたにもかかわらず、2018年12月に回答した以降、相続人への一切の説明及び資料の送付を拒んだ。
被懲戒者の上記行為は、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する
4処分が効力を生じた日 2022年3月29日 2022年10月1日 日本弁護士連合会
福井弁護士会が2022年3月28日付けでなし、2022年3月29日に効力を生じた被懲戒者に対す る戒告の懲戒処分について、懲戒請求者から異 議の申出があった。 本会は、 上記懲戒処分を変 更して、以下のとおり懲戒の処分をしたので、 懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第6号の規定により公告する。
記
1 処分を受けた弁護士 氏名川上賢正 登録番号,20833 事務所 福井県福井市宝永4-1-1 川上・野坂・安藤法律事務所
2 処分の内容 業務停止1月
3 処分の理由の要旨
(1) 審査の対象とすべき懲戒請求事由
原弁護士会綱紀委員会は、懲戒請求事由 1ないし7は除斥期間が経過しており、懲戒 請求事由8の報告義務違反のみが懲戒事由 に該当すると判断したところ、 原弁護士会 懲戒委員会は、これを踏まえ、 懲戒請求事 由8についてのみ審査を行い、対象弁護士を戒告処分に付したが、 原弁護士会綱紀委員会の議決書の主文は、懲戒請求事由1から8を峻別していないため、 原弁護士会懲戒委員会はこれら全てについて審査をすべきであった。
そして、原弁護士会懲戒委員会の議決に対して異議の申出があったため、 本会懲戒委員会は、これら全てについて審査する。
(2) 除斥期間 (懲戒請求事由4)
本会懲戒委員会は、懲戒請求事由1から7 のうち4以外については除斥期間が経過していると判断するが、 懲戒請求事由4につ いては、除斥期間は経過していなかったと 判断する。
すなわち、 対象弁護士が、相続人の1人である遺言執行者Aとの間では、遺言執行に関する委任契約を締結していたが、相続人B、Cとの間には委任契約も報酬に関する契約もなかったにもかかわらず、Aの補助者として同業務に関連して預かった金員から、 一方的に計算した報酬 (Bについて は351万5507円、 Cについては464万7872 円)を控除して遺産の分配を行い、BとC に対し支払うべき金員を支払わなかった行為は非違行為に該当し、 また、預かった金員の支払又は示談成立までは当該非違行為が継続していたと認められることから、懲戒請求事由4については、 除斥期間は経過していない。
(3) 懲戒請求事由8
懲戒請求事由8については、 本会懲戒委員会としても、原弁護士会が認定及び判断しているとおり、 対象弁護士には、 A及び Bに対する説明義務違反が認められると判断する。
すなわち、 被相続人の相続人が、税務調査を受けて修正申告を余儀なくされたことを機に相続人間の紛争が顕在化し、Bが代理人弁護士を選任し、 同弁護士から、 複数回にわたり、 対象弁護士の行った業務の処理内容について問合せがされ、 また、翌年には、元依頼者であったAも新たに別の弁護士を選任し、 同弁護士からも遺言執行に関する資料の開示依頼がされたにもかかわらず、 対象弁護士は、一度回答した以降、Aを含む相続人への一切の説明及び資料の送付を拒んだものであり、これは説明義務 違反に当たる。
(4) 結論
したがって、本件異議の申出には理由があり、 原弁護士会懲戒委員会の議決後、 対象弁護士が、 Bとの間で裁判上の和解を し、解決金200万円を支払ったことを有利 な情状として考慮しても、 なお、 原弁護士会がなした戒告の処分は軽きに過ぎて不当であり、対象弁護士に対する懲戒処分を業務停止1月に変更することが相当である。
4 処分が効力を生じた年月日 2023年9月19日 2023年11月1日 日本弁護士連合会