弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2023年12月号に掲載された弁護士の懲戒処分の公告 採決の公告の要旨
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所属弁護士会で戒告の処分を下されたが、日弁連に審査請求を申立てこれがみとめられたもの
東京弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。
記
1 処分を受けた弁護士氏名 楠純一 登録番号 29995
事務所 東京都千代田区九段北4-2-11第2星光ビル9階 平野総合法律事務所
2 懲戒の種別 戒告 (2023年10月 処分取消)
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は、所属事務所の代表者であったところ2016年9月頃、上記事務所に事務員として勤務していた懲戒請求者から残業代の取扱いにつき改善を求める書面を受け取り、上記事務所における事務員の残業代の取扱いに問題があることを認識したにもかかわらず、2017年12月下旬頃まで残業代の取扱いについて改善是正する措置を実施しなかった。被懲戒者の上記行為は、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。4処分が効力を生じた日 2022年5月9日 2022年10月1日 日本弁護士連合会
東京弁護士会が2022年5月9日に告知した同会 所属弁護士 楠純一 会員(登録番号29995) に対する懲戒処分 (戒告) について、 同人から 行政不服審査法の規定による審査請求があり、 本会は、2023年10月17日、弁護士法第59条の規 定により、 懲戒委員会の議決に基づいて、以下 のとおり裁決したので、 懲戒処分の公告及び公 表等に関する規程第3条第3号の規定により公告する。
1 裁決の内容
記
(1) 審査請求人に対する懲戒処分 (戒告) を取り消す。
(2)審査請求人を懲戒しない。
2 裁決の理由の要旨
(1) 審査請求人は、勤務弁護士として所属し ていた法律事務所の前代表者から同事務所の代表者としての地位を引き継いだ者であ るところ、 前代表者が用いていた不適切な 事務職員の残業代金の算出方法を、代表者に就任後も改善せずに用いていた。
原弁護士会は、審査請求人の上記行為が 弁護士法第56条第1項に定める弁護士とし ての品位を失うべき非行に該当するとし て、 審査請求人を戒告の処分に付した。
(2) 本会懲戒委員会が審査請求人から新たに提出された証拠及び本会懲戒委員会における審査請求人の審尋結果も含め審査した結果によっても、原議決書が認定している事実に誤りはない。
しかしながら、 原弁護士会は残業代の未払を理由とする懲戒請求事由自体は非行に該当しないとしながら、 残業代の不適切な計算方法を速やかに改善しなかった点が非行に当たると判断したものであるところ、 後者は前者の手段であり残業代未払という非行事由を評価するための根拠事実の一つにすぎないとも考えられるから、これを独立して非行と捉えることには疑問がある。 そして、所属事務所の事務職員に対する残業代の取扱いが労働基準法に違反していたという状況は、 所属事務所の前代表者が不適切な労働条件や労働時間の管理方法を定 めたことに起因するものであり、 審査請求人自らがそのような状況を生じさせたものではないこと、審査請求人が所属事務所の 代表者としての地位を引き継いだ後の事務 所運営について、 他の所属弁護士の協力が 得られない等ある程度の困難があったと考 えられること、審査請求人は、最終的には事務職員の労働条件について改善是正措置を講じるとともに、懲戒請求者を含む事務 職員全員に対し合理的根拠に基づいて算出したと認められる未払残業代相当の金員 を支払っていること及び審査請求人が自らの行為を深く反省していること等の事情も 認められるところであり、これらの事情を総合考慮すると、審査請求人を戒告の処分に付すことはやや重きに過ぎ、相当ではないと考えられ
(3) よって、 原弁護士会のなした懲戒処分を取り消し、審査請求人を懲戒しないこととするのが相当である。
3 裁決が効力を生じた年月日 2023年10月20日 2023年12月1日 日本弁護士連合会