【弁護士が業務停止の懲戒処分を受け依頼者に再委任承諾書を業務停止期間中に送付することの是非】
X(旧Twitter)で次のようなポストがありました
(引用 音無ほむら(エコーニュース)5月3日投稿)
懲 戒 処 分 の 公 告 4月25日付官報

弁護士法第64条第63項の規定により下記のとおり公告します。

          記

1 処分をした弁護士会   神奈川県弁護士会   
2 処分を受けた弁護士氏名 杉山程彦 登録番号 37300      
事務所 神奈川県横須賀市若松町3-4山田ビル            
プレミア法律事務所                
3 処分の内容 業務停止1月        
4 処分の効力が生じた日令和6年3月29日 令和6年4 月2 日 日本弁護士連合会

業務停止 3月29日~4月28日
音無さんという方が杉山程弁護士に民事事件を委任していたが、事件途中で杉山弁護士が業務停止になり解任したい意向があったが杉山弁護士から再委任契約書が業務停止期間中(4月8日付)に送られてきたのは業務停止中の弁護士業務にあたるのではないか?
業務停止中の弁護士の業務について各弁護士会で対応が若干違います。当会には東弁の「指示書」しかありませんが、ほぼ内容は同じだと思います
被懲戒弁護士の業務停止中の遵守事項(指示書) 東京弁護士会
1 法律事件等の取扱い(3条関係)

(1)委任契約の解除

業務停止を受けた場合は、すべての委任契約を解除しなければなりません。解除の対象となるのは、裁判所等に事件が係属するものに限らず、すべての委任契約です。裁判所、検察庁、行政庁に事件が係属する場合、被懲戒弁護士は辞任届の提出等の手続をしなければなりません。事件の利害関係人への連絡もする必要があります。

(2)業務停止が1か月以内の例外

(1)にかかわらず業務停止期間が1か月以内の場合、依頼者が委任契約の継続を希望するときは解除しないことができます。ただしこの場合、被懲戒弁護士は依頼者に対して契約の継続を働きかけてはなりません。依頼者が自らその旨の確認書を受領し、その写しを本会に提出しなければなりません。

(3)弁済代行の例外的措置(略)

2 顧問契約の解除(4条関係)

業務停止期間の如何に関わらず顧問契約はすべて解除しなければなりません

3 期日変更申請等(5条関係)

(1)期日の延期・変更の禁止

被懲戒弁護士は裁判期日の延期や変更をおこなってはいけません。業務停止期間が1か月を超える場合は、すべての委任契約を解除しなければならないので期日の延期、変更をすることは無意味ですので当然のことですが1か月以内の時で依頼者の希望により委任契約が解除されない場合があっても、期日の延期・変更はできないことを意味します。

(2)裁判所からの書類の受領禁止

裁判所等から書類が送付されてきた場合、これを受領してはならず、誤って受領してしまった場合は直ちに返還しなければなりません。ここでは裁判所、検察庁、行政庁からの書類の送付等となっていますが、業務に関する書類を受領してはならないのは、依頼者、顧問会社、事件の相手方や利害関係人などからの書類の受領も禁止されます。また書類だけでなく、事件に関係するファクシミリや電子メールも含まれます。電子メールの場合は返還することの意味はありませんが、誤って送信してきた相手方に業務停止中であり対応できない等の対応が必要となります。

4 預かり金等の受領禁止

(1)預り金の受領禁止

被懲戒弁護士は依頼者のために金員を受領してはなりません。業務停止期間が1か月以内の場合で依頼者の希望により委任契約が解除されない場合も同様です。依頼者から金員を受領することも同様に禁止です。ただし依頼者のために受領しないと、消滅時効が完成してしまうなど依頼者の不利益が生じる場合(民法654条が規定する急迫の事情がある場合)には例外的に受領できます。

(2)預かり金の清算

被懲戒弁護士は、依頼者からまた依頼者のために金員や物品を預かっていた場合にはこれを依頼者に返還しなければなりません。業務停止期間が1か月以内で依頼者の希望で委任契約が解除されない場合には返還を要しません。預り金については、委任契約の定めに従って適切に清算しなければなりません。

5 依頼者等への引継ぎ(7条関係)

被懲戒弁護士は委任契約や顧問契約を解除した場合は、依頼者や事件を新たに取り扱う弁護士や弁護士法人に誠実に事件の引継ぎをしなければなりません。

6 復代理人の選任(8条関係)

(1)復代理人の選任、他の弁護士等の雇用の禁止 (略)

(2)補助弁護士等への指示監督の禁止(略)

(3)共同受任(略)

7 弁護士報酬 (9条関係)

(1)着手金の清算

被懲戒弁護士が委任契約や顧問契約を解除した場合には、受領済みの着手金等を一部返還するなど委任契約書の定めに従って清算しなければなりません。(委任契約書には委任契約が途中で終了した場合の清算方法を規定することが義務づけられています。(日弁連・弁護士の報酬に関する規程第5条4項)

(2)弁護士報酬の受領

委任事務が終了して、弁護士報酬を受領する前に業務停止処分を受けた場合、弁護士報酬の額が委任契約書の定めによって明確になっている場合には弁護士報酬を受領することができます。弁護士報酬の受領は弁護士の業務そのものではないからです。報酬額の決定について依頼者と協議を要する場合であっても、特段の事情があるとき(たとえば協議をする前提として法律事務を行う必要があるとき)を除いて、協議をすることや協議に基づく弁護士報酬を受領することはできます。

8 法律事務所の管理(10条関係)

被懲戒弁護士は事務所の管理行為、賃貸借契約、勤務弁護士や事務職員の雇用契約を継続することができます。当然のことですが、勤務弁護士や事務職員を使って被懲戒弁護士が業務を行うことはできません。事務所の維持はできますが、法律事務所の看板を掲げたり、被懲戒弁護士が業務をしているかのような外観を呈することはできません。(11条)

9 事務所の使用

被懲戒弁護士は事務所の使用自体はできます。当然のことながら、事務所での業務はできません、業務に関して勤務弁護士、事務職員を指示監督することはできません(8条)また裁判所や事件関係者からの通知等の受領もできません(5条2項)事務所を使用することにより業務停止をないがしろにすることはあってはならないことですので、そのようなことがないように今後は弁護士会によって執行点検は細部にわたってなされることもあります、

10 法律事務所の表示の除去(11条関係)

(1)法律事務所・弁護士の表示の除去

被懲戒弁護士は、弁護士及び法律事務所であることを示す表札、看板などの表示を除去しなければなりません。ここで「除去」とは、取り外す以外に看板に白い紙を貼るなど、表示としての機能を失わせる措置のことを言います、除去の代わりに業務停止中であることを表示することも可能です。自宅の表札に「弁護士」の肩書を付けている場合も肩書部分を除去する必要があります。

(2)共同事務所の場合の例外R(略)

11 広告の除去(12条)

被懲戒弁護士は業務広告を除去しなければなりません。広告にはウエブサイト、メールマガジン、事務所報の配布・送付、看板、デジタルサイネージ、新聞広告、チラシ、テレビ広告など顧客を誘引する機能を有するものすべてが含まれます。ただし電話帳広告など除去が著しく困難なものについてはこの限りではありません。ウエブサイトは除去の対象となる広告ですが、たとえばウエブサイトを利用して業務停止処分を受けた事、依頼者との委任契約が解除となること、解除となった場合の注意点等を知らせる手段として使用することは許されます。

共同事務所の場合の広告について被懲戒弁護士が当該広告の代表者(弁護士が共同して広告する場合には広告代表者を表示しなければならないことになっています(日弁連・業務広告に関する規程9条3項)である場合には当該広告は除去すべきことになります。それ以外の広告の代表者である場合は広告の除去はしなくともよいことになります。ただし業務停止処分の前後に広告代表者を変更して広告を継続することは、広告除去の潜脱行為とみられる場合もあります。

12 名刺等の使用 (13条関係)

(1)名刺、用箋、封筒の使用禁止

被懲戒弁護士は、弁護士の肩書、事務所名を表示した名刺、事務所用箋、封筒を使用したり、他人に使用させたりしてはなりません。ただし11条の規定により共同事務所の他の弁護士が自己の職務を行う場合には事務所名を表示した当該弁護士の名刺や事務用箋、封筒を使用することができます。

(2)3条業務以外の職務を行う場合の弁護士の肩書使用の禁止

被懲戒弁護士は弁護士法3条に規定する職務(当時者その他関係人の依頼または官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訴事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律行為)を行うことはできませんが、これ以外の活動、たとえば執筆、講演、メデア出演、社外役員としての活動を行うことはできます。しかし、このような活動であっても弁護士の活動を使用してはなりません。

13 記章と身分証明書の返還 (14条関係)

被懲戒弁護士弁護士バッジと身分証明書を当会を通じて日弁連に返還しなければなりません。

14 職務上請求用紙等の返還 (15条関係)(略)
15 会務活動等の制限 (16条関係)(略)
16 公職等の辞任(17条関係)(略)
17 弁理士及び税理士の業務 (18条関係)(略)
18 面談室の使用禁止 (19条関係)(略
19 当会への連絡 (20条関係)

被懲戒弁護士は、当会に対して遵守事項の履行状況を報告しなければなりません。報告にあたっては当会所定の報告書のフォーマットを使用してください。また当会からの指導監督に従わなければなりません。当会が被懲戒弁護士の法律事務所等に執行点検に行った際には、点検調査に協力しなければなりません。遵守事項が履行できていないときはそれが新たな懲戒事由になり得ることになります。

20 会費納入義務 (21条)(略)

被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制等について

 改正 (平成四年一月十七日理事会議決)弁護士会及び日本弁護士連合会のとるべき措置に関する基準

http://newprofession.jp/tajima/files/2015/07/kisoku_hichoukai_kijun.pdf

(1)委任契約の解除

業務停止を受けた場合は、すべての委任契約を解除しなければなりません。解除の対象となるのは、裁判所等に事件が係属するものに限らず、すべての委任契約です。裁判所、検察庁、行政庁に事件が係属する場合、被懲戒弁護士は辞任届の提出等の手続をしなければなりません。事件の利害関係人への連絡もする必要があります。

(2)業務停止が1か月以内の例外

(1)にかかわらず業務停止期間が1か月以内の場合、依頼者が委任契約の継続を希望するときは解除しないことができます。ただしこの場合、被懲戒弁護士は依頼者に対して契約の継続を働きかけてはなりません。依頼者が自らその旨の確認書を受領し、その写しを本会に提出しなければなりません。

音無さんに送付した再委任通通知書が依頼者に再委任を働きかけた(お願い)という内容ですから、問題のある行為でしょう。業務停止中に書面を送付してよいかについては、指示書にはありませんが、事務所を使用して送付(法律事務所の封筒を使用、弁護士の職印、弁護士としての肩書ある書面が送られていますので問題のある行為だと思います

 

 

弁護士の肩書を使用して業務停止期間中にメールを送信することは業務停止中の業務となります。音無ほむらさんは杉山弁護士を解任して着手金の返還を求め神奈川県弁護士会の紛議調停を申し出ておられるようです。杉山弁護士は速やかに返還すべきではないでしょうか。

「弁護士が業務停止の懲戒処分を受け着手金の返還等に関する処分例」

懲 戒 処 分 の 公 告  2021年10月号

1 処分を受けた弁護士氏名 張學錬 登録番号 27297 AITS法律事務所 2 懲戒の種別 業務停止1月  

3 処分の理由の要旨

被懲戒者は、2018年7月6日付けで、懲戒請求者と委任契約を締結し、懲戒請求者の私選弁護人に就任し、着手金80万円の支払を受けたが、第1回公判期日前の同年12月25日に所属弁護士会から業務停止処分を受けて、懲戒請求者の弁護人を辞任し、もって上記委任契約は中途で終了したため、懲戒請求者が着手金の返還を求めたところ、接見等の出張費用に関する合意の成立は認められず、委任契約書には上記委任契約が中途で終了した場合の清算方法について記載がないにもかかわらず、接見等の出張費用が80万円となり、返金すべき金額はないが、お詫びとして20万円だけ返すと言って、20万円のみを現金書留で方的に返金し、残金60万円を返金せず、懲戒請求者との間で協議に応じることもしなかった。4 処分が効力を生じた日 2021年4月29日 2021年10月1日 日本弁護士連合会

懲 戒 処 分 の 公 表 東弁会報リブラ
本会は下記会員に対して弁護士法第57条に定める懲戒処分をしたので、お知らせします。

被懲戒者 佐藤文昭(登録番号26711)登録上の事務所 2ベストフレンド法律事務所懲戒の種類 業務停止1月

効力の生じた日 2021年3月19日

懲戒理由の要旨

(1) 2017年1月30日、懲戒請求者、A及びBの3名についての覚せい剤取締法違反事件につき、捜査弁護及び公判弁護の依頼を受けて、着手金として合計182万8000円を受領したが、Aについては公判請求と同日である同年3月2日に弁護人を辞任し、懲戒請求者については第1回公判期日前である同年4月14日に懲戒請求者から弁護人を解任された、被懲戒者は、懲戒請求者から着手金の一部である83万6000円の返金を求められたが、これには一切応じなかった。 東京弁護士会会長 冨田 秀実

懲 戒 処 分 の 公 告 2016年4月 日弁連異議

香川県弁護士会が2014年10月16日付けでなし2014年10月20日に効力を生じた被懲戒者を懲戒しない旨の決定について、懲戒請求者から異議の申出があった。本会は、上記決定を取り消して以下の通り懲戒の処分をしたので懲戒処分の公告及び公表等に関する規定第3条第6号の規定により公告する。           

1 処分を受けた弁護士氏名 安藤誠基 登録番号 24501 安藤法律事務所2 処分の内容 戒告

3 処分の理由の要旨

(1)異議申出人から医療事故による損害賠償請求訴訟を受任した被懲戒者が第一審の弁論終結日から判決言渡日までの間に業務停止3月の処分を受け、訴訟代理人を辞任したことについて

① 辞任後に着手金の清算をしない

② 訴訟活動が不適切、不誠実であった、

として懲戒請求されたところ香川県弁護士会(以下「原弁護士会」という)は懲戒しない旨の決定をした。

(2)日本弁護士連合会懲戒委員会は審査の結果、原弁護士会が認定した事実のほかに、被懲戒者が、本件訴訟の訴訟代理人を辞任した後、異議申立人が新しく委任した弁護士による弁論再開申し立てが認められ弁論再開後約2年の審理を経て、異議申出人の請求を一部認める判決が言い渡されたことを認定した。また原弁護士会綱紀委員会の議決がなされた後で被懲戒者から異議申出人に対し着手金の半額程度の返還を申し出たものの、原弁護士会において懲戒しない決定がなされた後、被懲戒者が清算義務を履行しようとしていない事実も認められる。

 (3)被懲戒者の攻めに帰すべき理由により訴訟代理人を辞任せざる得なくなったこと、異議申出人が強く弁論再開を望んでいたこと、実際に弁論が再開され、その後2年間審理が続けられたこと等を踏まえると、被懲戒者は訴訟代理人として業務が存在していた段階で辞任したことになり、着手金を清算すべき義務が存すると判断される。また被懲戒者は着手金の半額程度の返還の意向を示しながら、原弁護士会で懲戒しない旨決定がなされた後は、異議申出人からの請求に対して何も回答することなく清算義務を履行しようとしていない

これは著しく不誠実な対応はといわざるを得ず、弁護士としての品位を失うべき非行に該当する、

(4)異議申出人は異議申出人が提出するよう求めていた証拠を提出しないなど被懲戒者の訴訟活動は不適切であったと主張するが、関係証拠によれば、被懲戒者の訴訟活動が不適切または不誠実であったと判断することはできず、被懲戒者の訴訟活動について弁護士として品位を失うべき非行があったと評することはできない。

(5)以上のとおり、本件異議申出は前記(1)①の着手金不清算について理由があるから、被懲戒者を処分しないとした原弁護士会の決定を取り消し、被懲戒者を戒告することが相当である。なお本件には懲戒しないことを相当とする反対意見がある。

4 処分が効力を生じた年月日  2016年4月18日 2016年6月18日 日本弁護士連合会

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