綱紀審査会の運用状況について
2015年7月29日
日本弁護士連合会
弁護士に非行の容疑があれば弁護士の所属している弁護士会に懲戒請求を出せます。
所属弁護士会で請求が棄却された時は日弁連綱紀委員会に異議申立ができます。
所属弁護士会、日弁連でも棄却された場合は綱紀審査会に審査請求ができます。
刑事事件の検察審査会と似たようなものです。
年間約2300件の懲戒請求が出されますが処分になるのは約100件です。全体の2~3%しか処分になりません、日弁連に異議が出されるのは約1000件余りだと思います。日弁連で異議が認められるのは年間で約2件ほどです。そして最後の綱紀審査会に審査請求が出されるのが年間約600件です。
その中で審査請求が認められるのが年間1件~2件です。
2015年1月~6月30日までの綱紀審査会の運用状況が発表されました。
1 事案処理状況
継続 209 新受 171 審査相当 1 審査不相当 199
却下 13 その他 1 計 214 未済 166
(却下は請求期間が過ぎていたもの)
2 審査相当事案について
(1)事案の概要
対象弁護士と依頼者との間での意見の相違が表面化し、依頼者から資料の返却を求められてから約5ヵ月間にわたり、資料を返却せず、また交渉を積極的に進行させることも、受領していた着手金を清算することのいずれも行わなかったことが、弁護士職務基本規定第35条及び第43条の趣旨に照らし、弁護士としての品位を失うべき非行に当たるとされた事案
(2)綱紀審査会の議決の理由と要旨
対象弁護士は綱紀審査申出人(以下申出人という)からA社に対する損害賠償請求ッ事件を受任し申出人との間でA社に対する損害賠償請求を優先させて行う旨合意した。そしてA社に対する訴訟が提起されたが全面敗訴となり、その後に控訴審で和解が成立した。
その後、申出人は対象弁護士に対して送信した電子メールにおいて対象弁護士に預託してた資料の返却を求めた、また対象弁護士が申出人に対して電子メールでB社との関係で解決金30万円を前提として示談交渉を行うことを提案したところ申出人はB社との関係で解決金30万円にとどまらず、それ以上の利益獲得を目指して交渉を進める上で見込まれる期間と費用について説明を求める趣旨の電子メールを返信した。
しかし対象弁護士は申出人から電子メールを受領してから約5カ月間にわたり資料を返却しなかった。また対象弁護士はB社との関係でも着手金を受領していた以上、
申出人からの電子メールを受領した後、B社との交渉を積極的に進行させるか、又は受領していた着手金を清算するかいずれかを選択して行うべきであったにもかかわらず、約5ヵ月間にわたり、いずれも行わなかった。
対象弁護士のこれらの行為は弁護士職務基本規定第35条及び第43条の趣旨に照らし弁護士の品位を失うべき非行に当たる。
(3)綱紀審査会の議決の年月日 2015年2月10日
弁護士職務基本規定
(事件の処理)
第三十五条 弁護士は、事件を受任したときは、速やかに着手し、遅滞なく処理しなければならない。
第三十五条 弁護士は、事件を受任したときは、速やかに着手し、遅滞なく処理しなければならない。
(信頼関係の喪失)
第四十三条 弁護士は受任した事件について依頼者との間に信頼関係が失われ かつ、その回復が困難なときは、その旨を説明し、辞任その他の事案に応じた適 切な措置をとらなければならない。
第四十三条 弁護士は受任した事件について依頼者との間に信頼関係が失われ かつ、その回復が困難なときは、その旨を説明し、辞任その他の事案に応じた適 切な措置をとらなければならない。