弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2021年3月号に掲載された弁護士の懲戒処分の公告・東京弁護士会・浅野健太郎弁護士の懲戒処分の要旨
処分理由・非弁提携
弁護士の懲戒処分の公表は、処分を受けて約2週間後に官報に公告され、その後3月から4か月後の日弁連広報誌「自由と正義」に処分要旨が公告として掲載されるのが普通です。本来ならば2020年7月号、コロナの影響があり遅くとも9月号あたりには掲載すべきものです。なぜ掲載が遅れたか自由と正義の編集後記で書くべきでは・・・・
今回の処分は法人の弁護士法人ベリーベスト法律事務所の処分と代表弁護士の酒井将弁護士と浅野健太郎弁護士が処分を受けました。文面は同じです。
ベリーベスト法律事務所は通常通り営業をしております。
2020年3月12日に弁護士法人ベリーベスト法律事務所、および弁護士酒井将、弁護士浅野健太郎(いずれもベリーベスト虎ノ門法律事務所所属)が、東京弁護士会から業務停止6カ月の処分を受けました。ベリーベスト法律事務所は、ベリーベスト弁護士法人および弁護士法人VERYBESTによって構成されており、上記の弁護士法人ベリーベスト法律事務所、弁護士酒井、弁護士浅野とは、別の法律事務所です。従って、当事務所(ベリーベスト弁護士法人)とご契約されているお客様の案件については、何の影響もありませんので、ご安心ください。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
東京弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。
記
1 処分を受けた弁護士氏名 浅野健太郎
登録番号 30001
事務所 東京都港区虎ノ門5-3-14 日産研会館2階
ベリーベスト虎ノ門法律事務所
2 懲戒の種別 業務停止6月
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は、弁護士法人Aの代表社員として、弁護士法人Aが2014年12月25日から2017年3月31日までの間、報酬を得る目的で業として訴額が140万円を超える過払金返還請求事件を周旋していた司法書士法人Bから継続して上記事件の紹介を受け、少なくともその対価を含むものとして1件当たり19万8000円を支払ったことにつき、その決定をした。
被懲戒者の上記行為は弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
4処分が効力を生じた日 2020年3月12日 2021年3月1日 日本弁護士連合会
1 被懲戒者弁護士法人ベリーベスト法律事務所(以下「被懲戒法人」という)は、司法書士法人新宿事務所(以下「新宿事務所」という)から2014年12月25日から2017年3月31日までの間、簡易裁判所の事物管轄である訴額140万円を超える過払金請求事件(以下「140万円超過事件」という)の紹介を受け、新宿事務所に対して1件につき一律19万8000円(消費税込)になっている。また期間内に新宿事務所から被懲戒法人に紹介がなされた案件数は月に300件を超え、全期間の合計で7000件ないし8000件に達し、反復継続して大量の140万円超過過払事件が紹介された。
2 被懲戒者酒井将(以下「被懲戒者酒井」という)は被懲戒法人の代表社員として新宿事務所との間で業務委託契約を締結すること及び140万円超過過払事件の紹介を受けたときは、1件につき19万8000円を新宿事務所に支払うことを決定し、現に支払っていた。
3 被懲戒法人が新宿事務所から140万円超過過払事件の紹介を受け、新宿事務所に対して1件につき19万8000円の紹介料を支払う行為は、弁護士職務基本規程(以下「基本規定」及び弁護士法(以下「法」という)第27条(非弁護士との提携の禁止)法第30条の21(弁護士の義務等の規定の準用)に違反し法第56条第1項の品位を打足なうべき非行にあたる。
また、被懲戒者酒井及び被懲戒者浅野は、被懲戒法人の代表社員として、被懲戒法人の上記行為について決定をしたものであり、これは法第56条第1項の品位を失うべき非行に当たる。
4 被懲戒法人らは、19万8000円は、事件紹介や周旋の対価ではなく、新宿事務所から引き継ぐ成果物の対価及び訴状等裁判所作成支援業務の対価であり、新宿事務所にすれば、司法書士が合法的になし得る実体のある業務の合理的な対価であると主張する。
しかしながら、① 被懲戒法人が新宿事務所に業務委託をし。その成果物の引継がなされたとは認められない。この成果物は新宿事務所が受任したことにより自己の業務に基づき作成されたものであること
② 従って、新宿事務所と依頼者との間でこの対価が発生しておりその間で清算が行われるべきであり、当該依頼者に無断で被懲戒法人が新宿事務所に対して対価なるものを支払うべき筋合いではない。かくして、被懲戒法人が依頼者から弁護士報酬を受け取ってない段階で、新宿事務所に対して一定の金員の支払をすることは事件の紹介に対する対価であるか、仮に他の趣旨が併存しているとしても少なくとも事件紹介の対価が含まれていることは否定できないこと
③ 弁護士への事件紹介は無償であることが原則とされ、弁護士が事件屋から事件を受任することが禁止されている現行懲戒制度の下では、第三者が事件及び依頼者を対価の支払を伴う取引の対象とすることは禁止されているのであって、本件でも19万8000円が成果物の譲渡の要素のみから含まれているとみるべきこと
④ 新宿事務所と依頼者の間では、成果物に係る業務については無償であることが委任契約書に明記されているので、依頼者は新宿事務所に19万8000円を支払う義務があるとは認識しておらず、また新宿事務所も被懲戒法人も依頼者に対して、被懲戒法人から新宿事務所に19万8000円の支払がなされていることを説明し、同意を得ていた事実はなく、依頼者の知らないところで金銭授受が行われていたこと、
⑤ 本件スキームは市民の権利救済という美名の下で、結果として事件紹介業をビジネスとして成立させてしまう危険性があり、弁護士がこれに加担する結果を招くことになって、許されないものであること、
⑥ 裁判書類作成業務の委託についてもその必要性の疑義があり合理性が認められないこと
⑦ 被懲戒法人が主張する対価の相当性についても疑念があること
⑧ 被懲戒法人は、いわゆるワンストップ・サービスを提供したものとして、基本規程第12条の報酬分配規制の例外としての「正当な理由がある場合」に該当して許容されると主張するが、正当な理由による報酬の分配とは到底認められないこと、
⑨ 依頼者の金銭負担が増えていないとは必ずしも評価されず、
⑩ ガイドライン等が制定されていないことと本件取引の成立は何ら関係なく、明らかに基本規程第13条第1項に違反するものであること等の事実からすれば、被懲戒法人らの主張には理由がない。
また、法第27条違反についても新宿事務所は、法72条後段の構成要件である①周旋行為を②業として、③報酬を得る目的で行っている。
ただ、認定司法書士を法第72条にいう非弁護士として断定してよいか議論があるところではあるが、法第72条但し書きの反対解釈として認定司法書士の周旋については、非弁護士と言わざるを得ない。
被懲戒法人らは、新宿事務所から案件の紹介を受けることにより訴訟提起をして(紹介案件の70%から80%の割合)貸金業者から平均360万円程度の回収を行い、平均して96万円の弁護士報酬を取得した。このうち20%に相当する金員を新宿事務所に支払っている。
本件の被懲戒法人らの行為は紹介先が140万円超過払事件につき代理権を有しない司法書士からの紹介案件であることを考慮しても、その規模においてこれまでの非弁提携案件と比較して非行性が強いものである。結果的には90万円強の弁護士報酬を獲得するために、紹介料を支払い、事件の買取りをしていたと評価することができ、強い非難を受けることはやむを得ないところである。
懲戒請求後、被懲戒法人の業務活動を事実上停止させ第二東京弁護士会に新たに弁護士法人を設立して支店(従事務所)を移動して活動するなど、「懲戒逃れ」と見られてもやむを得ない行動もしている。
その一方で、被懲戒法人らの業務そのものは、前件訴訟提起を原則に、依頼者の利益のために極大回収を目指してしたこと、依頼者に紹介料を全額転嫁しているとまでは認められないこと、司法書士が受任できない140万円超過払事件の依頼者を放置できないと考えた動機にも斟酌できるものがあること、依頼者から被懲戒法人らの業務についてのクレームが本会に多数寄せられているまでとは言えないこと等、被懲戒法人らに有利な事情も認められる。
以上の事情を総合的に考慮して上記懲戒の種類とした。2020年3月12日 東京弁護士会会長 篠塚 力
(非弁護士との提携)
第十一条 弁護士は、弁護士法第七十二条から第七十四条までの規定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる 相当な理由のある者から依頼者の紹介を受け、これらの者を利用し、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
(報酬分配の制限)
第十二条 弁護士は、その職務に関する報酬を弁護士又は弁護士法人でない者との間で分配してはならない。ただし、 法令又は本会若しくは所属弁護士会の定める会則に別段の定めがある場合その他正当な理由がある場合は、この限りでない。
(非弁護士との提携の禁止)
第二十七条 弁護士は、第七十二条乃至第七十四条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律に別段
の定めがある場合は、この限りでない。