2023.11.21 国際ロマンス・投資詐欺のFAQ
Q1 国際ロマンス・投資詐欺とはなんですか?
A1 国際ロマンス・投資詐欺とは『出会い系サイトやマッチングアプリ等で出会い、恋愛感情を持った相手から、実態のわからない投資等の海外サイトを紹介され投資したが、出金できなくなった』という類いの詐欺です(国民生活センター。https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20220303_2.html)。被害回復が極めて困難であるとされています。
Q2 なぜ、被害回復が困難なのですか?
A2 国際ロマンス・投資詐欺では、
①SNSでやりとりをした人とお金を振り込んだ口座の名義人が別人であるため、口座名義人から詐欺をした人にたどり着かなかったり、②SNSでやりとりをした人が誰かをSNSの運営会社に問い合わせても突き止められなかったり、③お金を振り込んだ口座を差し押さえても既に出金されていたり、仮にお金が残っていても他に差し押さえた人と分配しなければならなかったり、④SNSでやりとりをした人を突き止めることができたとしても、海外在住であるなどの理由から、被害回復に至らないことが多いとされています。
A3 詐欺の加害者から指定されたアドレスの調査を行っても、加害者を特定するのは極めて困難なのが実際のところです。また、調査会社に依頼すると調査費用がかかります。
仮に、調査の結果、加害者が特定されても、海外居住の外国人であることも多いので、回収は困難を極めます。
A4 振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)に基づいて送金先の口座を凍結して被害回復分配金の支払を受けるという手段は考えられます。
しかし、犯罪に利用されている銀行口座は、お金が振り込まれるとすぐに出金されることが多く、凍結(取引の停止)をしても口座にほとんど預金がないということが少なくありません。また、他にも被害者がいると分配することになりますので、預金全額を自分の被害回復に充てられるとは限りません。
A5 確かに、弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会や、訴訟・民事調停で行われる調査嘱託を利用して口座名義人を特定することができ、口座名義人に責任追及をすることができる場合があります。
しかし、加害者が、銀行に無断で譲渡された別人名義の口座を利用しており、口座の名義が詐欺を行った加害者ではないことが多くあります(犯罪による収益の移転防止に関する法律28条や銀行約款で口座の譲渡は禁止されています。)。そのため、口座名義人が詐欺自体に関わっておらず、実際に詐欺を行った加害者にたどりつかず、責任を追及することができないことも多くあります。他方で、口座を譲渡した口座名義人は、口座を「売る」ほどお金に困っていて資産がないことがほとんどで、責任を追及しても被害回復を期待できません。
A6 国際ロマンス・投資詐欺は、一般的に、被害回復が極めて難しい類型とされており、被害を回復することができない可能性が高いとされています。
そのため、新たに弁護士に依頼しても、その弁護士への支払分も回収できずに、費用倒れになる可能性が高いとされています。
依頼に当たっての見込みや可能性については、依頼を検討されている弁護士と十分に話し合ってください。
A7 弁護士の費用(着手金及び回収ができた場合に発生する報酬金)については、一定の基準がなく、弁護士がそれぞれ決めています。したがって、一律に弁護士費用がいくらであると回答をすることはできません。
費用倒れにならないかなど、依頼を検討される弁護士と、ご自身が納得するまでよく話し合ってください。また、調査費用などの実費の支払を求められることがありますのでご注意下さい。
A8 当会の法律相談センター(有料)や法テラス(資力要件があります。)を紹介することはできます。しかし、相談を受けた弁護士が事件を受任することはお約束できません。事件を受任するかどうかは個々の弁護士の判断に委ねられているからです。
A9 弁護士会は、個々の弁護士の信頼性などの評価をしておりません。したがいまして、依頼して大丈夫であるか否かを回答することはできません。
弁護士に事件を委任するに当たっての注意事項については、Q10「弁護士に事件を委任するにあたっての注意点を教えてください。」をご参照ください。
A10 不特定多数に向けて大々的な広告をしているのに、その広告で集まる多くの依頼者に対応するだけの人数の弁護士がおらず、弁護士が個々の事件を把握できないような場合には、弁護士による適切な事件処理が期待できるとは思えませんので、事件を委任することはお勧めできません。委任するにあたっては、直接弁護士から説明を受けて今後の事件処理などについてご確認ください。なお、SNSなどでのメッセージのみの遣り取りだけでは弁護士が返信しているのか分かりませんのでご注意下さい。
また、国際ロマンス・投資詐欺の対応は容易ではありません。口座凍結や弁護士会照会をしても被害回復ができるとは限りませんので、そうしたリスクの説明を十分にしているかもポイントになります。このリスクについての詳細は、Q4「送金先として指定された加害者の預金口座を凍結すれば、被害を回復させることはできるのですか?」、Q5「弁護士会照会(23条照会)や訴訟・民事調停での調査嘱託等で口座名義人を突き止めて被害回復を図ることはできるのですか?」をご確認下さい。
Q11 弁護士に依頼して着手金も払っているのに進展していません。どうしたら進展しますか?
A11 依頼した弁護士と直接よく話し合い、事件の具体的な進展状況や今後の見通しを確認して下さい。
もし、依頼した弁護士と直接話ができず、もっぱら事務員や秘書など弁護士以外の者が対応する場合や、進展状況の話に具体性がなく、いつ誰にどのようなことをしたのかを説明してもらえなかったり、今後の見通しがあやふやであったりする場合には、今後も進展しないままの可能性があります。
当会としては、依頼した弁護士が当会所属であれば、当該弁護士に適切・迅速に交渉や手続をすすめて欲しいなどのご意向を伝えることはできますが、依頼されている事件の処理方針等について具体的に指導することは原則できません。 今後も進展しない可能性が高い場合には、依頼している弁護士との委任契約を解消することも検討された方がよいと思います。
A12 弁護士会は、所属する弁護士に、交渉や手続を適切かつ迅速にすすめて欲しい旨の依頼者の意向を伝えることはできますが、個別の事件について弁護士会がその内容や処理方針等に立ち入って指導することは原則できません。
A13 依頼している弁護士との委任契約を解消して着手金の返還を求めることはできます。
しかし、既に支出された費用などの精算を求められることがありますので、着手金全額を返してもらえるとは限りません。
また、依頼した弁護士が着手金の返還に応じなければ、訴訟などを提起する必要がありますし、訴訟で勝訴しても依頼した弁護士に資産がなければ着手金を返してもらうことはできません。
まずは、依頼している弁護士とよく話し合ってください。もし話し合いが上手くいかない場合には弁護士会の紛議調停などの利用を検討して下さい。詳しくはQ14「着手金の返還について弁護士との話し合いが上手くいきません。弁護士会が間に入ってくれませんか?」をご覧下さい。
A14 弁護士会は、弁護士の個別事件に立ち入ることが原則できませんので、個別事件の処理方針などの調整や、継続的に間に入って種々の調整を行うなど間に入っての取り持ちはできません。
しかし、当会に所属している弁護士との紛議(トラブル)については、当会所属の弁護士が間に入って話し合いによる解決を求める紛議調停という手続を用意しています。
当事者同士の話し合いではまとまらない場合には、紛議調停の手続をご検討ください。
もっとも、紛議調停への出頭や合意を強制することはできませんので、弁護士が紛議調停に出頭しなかった場合や、合意しない場合には調停できずに終了となります。
なお、依頼した弁護士が当会の弁護士かどうかは、日本弁護士連合会の弁護士検索でご確認ください。URLは次のとおりです。
https://www.nichibenren.or.jp/search.html
A15 ①所属弁護士等の苦情や要望を聞く当会の窓口である「弁護士業務等に関する市民窓口」に問い合わせる。②所属弁護士等の職務に関するトラブルについて話し合って解決を目指す「紛議調停」を当会に申し立てる。③品位を害すべき非行がある場合に懲戒請求を申し立てる。④具体的事案(国際ロマンス・投資詐欺対応や同対応を依頼した弁護士への対応)について法律相談を受ける(有料)といったことがあります。
もっとも、①③④は着手金返還などを直接請求するものではありません。また、④は有料です。