【懲戒処分の効力停止】弁護士懲戒手続の研究と実務(第3版)日弁連調査室編

3日弁連懲戒制度 

効力停止について

1 審査請求と原処分の効力 

(1審査請求なさ場合当該処分効力あるいはその執行どうするか立法政策問題ある。 

審査請求処分効力及び執行妨げないとして執行停止原則とりながら()国民権利利益保護について配慮し審査請求執行停止申立与え()この立てあっ審査速やか執行停止するどう決定なけれならないものいる()。 

懲戒委員規程において日弁連立て又は職権懲戒処分効力停止することできる(規程六 )

なお処分効力処分執行停止その他措置執行停止という用語定義いる弁護懲戒に関して処分効力停止以外措置考えることできないので懲戒委員規程「効力停止」 表現いる。 

このように、審査請求があっただけでは、原処分の効力は停止しない。 

効力停止本案たる審査請求認容れる場合処分によって重大損害生じる避けるためられるべきものあるから審査請求がなされていることが効力停止申立ての前提となる 

したがって審査請求をしないで効力停止のみを申し立てることはできない。 

懲戒処分受け弁護士効力停止申し立てる掲げる事項(懲戒委員規程)ほか申立所属弁護士記載効力停止申立正本日弁連提出なけれなら ない(懲戒委員規程四六)。 

効力停止原状回復困難ないため行われるものあるから日弁連立てあっときは,その 立て認めるどう速やか判断下すべきある(参照)。 

3 効力停止の意義及び要件 

懲戒処分効力停止する懲戒処分効力停止審査請求に対する裁決まで処分なかったもの同様効果与えることある停止効力形成ものあり遡及効果ない。 

処分上級行政ある審査必要ある認めるとき審査請求人の申立てにより又は職権 処分効力停止することできる規定()このうち審査請求立てあった場合につい処分により生ずる重大損害避けるため緊急必要ある認めるとき審査効力停止なければならない規定いる(本文)ただし公共福祉重大影響を及ぼすおそれあるとき、処分執行若しくは手続続行できなくなるおそれあるとき又は本案について理由ないみえるときされな(ただし)審査重大損害生ずる判断するに当たって損害回復困難の程度を考慮するもの損害性質及び程度並びに処分の内容及び性質勘案するものするれる()

ころ懲戒委員規程において義務効力停止について規定ないそのため懲戒委員会規程が、行審法の特則として義務的な効力停止の場合を排除しているのか、単に規定がない場合とし されるのか(懲戒委員会規程三三条)が判然としない。

効力停止が義務的になされる場合を排除すると 日弁連に委ねられた懲戒手続についての会則等の制定権をしても難しいように思えるが、いずれにしても、日弁連における 審査請求に伴う効力停止の審査では、懲戒委員会が職権審査を行い、原処分について本案に理由がない が審査されるので、右の義務的な効力停止の適用の有無は、効力停止の結論には影響していないという である。

そして、いかなる場合に効力停止が認められるかについては、具体的事案ごとに検討する以外にない

なお、法五六条の懲戒処分の種類のうち戒告については、告知によって効力を生じ、しかも同時に処分が完了なので、効力停止の申立ては理由がない (昭和五六年一〇月三〇日日弁連懲戒委員会議決議決例集V )

例えば業務停止一月の処分を受けた弁護士が、 すでに業務停止期間を満了した後に効力停止の申し立てなした場合等についても、同様に理由がない。 

4 審理手続  

効力停止立てに対する審理手続について懲戒委員議決によること要求ているかが問題となる条は文言行政不服審査による審査請求あっときについて懲戒委員決に基づき「裁決すること規定いるあっ効力停止決定について定めいる読むこと困難である。

 思うに弁護士懲戒処分告知によって効力生じおり効力停止べき緊急を要することであから懲戒委員議決要するするかえって対象弁護士保護欠けることなりかねない。

 したがって同条審査請求に対する裁決について懲戒委員議決基づくこと要求いるが、効力停止の決定についてまで委員議決基づくこと要求ない解すべきある

懲戒委員会規程もこれを不要と(同規程)ただ懲戒処分効力停止するとき効力停止立て却下する場合や、一旦なした効力停止決定その後事情変更理由取り消す場合()あらかじめ懲戒委員会の意見を聴かなけれならないものいる(規程)この懲戒委員に対する意見、日弁連が決定をなすに、あたり参考として意見徴する趣旨あっ日弁連意見拘束れるものない。 

なお例えば業務停止処分なさ場合効力停止決定あっときそのからできる(訴法による執行停止について74参照)ここいうそのとは決定時ではな決定効力発生ことあり具体懲戒委員規程による書面による通知がなされた時である

審査請求に対する裁決場合についてある送達により効力生じるとしており、また訴法執行停止場合訴法特段定めないのでにより民事訴訟の例によることとなる民訴決定及び命令相当認める方法告知することによってその効力を生じるとしておりこれらを別異に解する理由はないからである。

5 効力停止決定の取消し等 

日弁連は、事情に変更があるときは、前になした効力停止の決定を取り消すことができる(懲戒委員会規程46条3項)行審法35条は「執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼし,又は処分の執行若しくは手続の続行を不可能とすることが明らかとなったとき、その他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取消すことができる」と規定している。

また、審査請求人は、審査請求について前述の取り下げができるほか、効力停止の申し立てについても、審査請求に対する採決があるまでは、いつでも書面により取り下げができるほが(懲戒委員会規程49条、43条1項・2項)日弁連は、効力停止の決定の後、審査請求又は効力停止の申し立てが取り下げられたときは効力停止の決定を取り下げなければならない(同規程46条4項)

6 効力停止に関する決定 

(イ)日弁連が、効力停止の申し立てに対し、その必要がないと判断したときの主文例は次のとおりである

「本件申立てを却下する」

(ロ)効力停止決定の場合 

日弁連が効力停止の申立てに対し、又は、職権で効力停止の必要があると判断したとき(懲戒委員会規程46条)の主文例は次のとおりである。

「〇〇弁護士会が〇年〇日付けで審査請求人に対してなした処分の効力は、審査請求に対する採決に至るまでこれを停止する」

(ハ)効力停止決定の取消しの場合 

事情変更により前になした効力停止決定を日弁連が取り消すとき、又は審査請求若しくは効力停止の申立てが取り下げられたことにより効力停止決定を日弁連が取り消すときの主文例は次のとおりである。

「日本弁護士連合会が、〇年〇月〇日で〇〇になした効力停止決定を取り消す」

(二)不服申立て 

(イ)から(ハ)もでの日弁連の決定に対しては、行審法に基づく不服申立ては認められない(法49条の3)

7 公 告 

日弁連が「懲戒の処分の効力停止の決定をし、又はその効力の決定を取消したとき」は、官報及び機関雑誌に次に掲げる事項を掲載して公告することになっている。(懲戒公告規程3条4号)

① 原弁護士会がした懲戒の処分の効力を停止し、又は効力の停止を取り消した旨 

② 原弁護士会の名称 

③ 対象弁護士の氏名(職務上の氏名を使用している者については職務上の氏名を併記する)又は名称及び登録番号又は届出番号

④ 原弁護士会がした処分の内容 

⑤ 原弁護士会がした懲戒の処分が効力を生じた年月日

⑥ 懲戒の処分の効力を停止し、又は効力の停止を取消した年月日 

8 通知 

(イ)審査請求人等への通知

日弁連は、懲戒処分の効力を停止したとき又は前にした懲戒処分の効力停止の決定を取り消したときは、速やかに、審査請求人、懲戒請求者及び原弁護士会に、その旨を書面により通知しなければならない。また効力停止の申立てを却下したときは、審査請求人に、その旨及び理由を書面により通知しなければならない。

(ロ)関係官公署への通知

日弁連が「懲戒の処分の効力停止の決定をし、又はその効力停止の決定を取り消したとき」は

① 最高裁判所及び検事総長 ② 対象弁護士等の所属する弁護士会の地域を管轄する高等裁判所並びにその域内地方裁判所及び家庭裁判所、③ 対象弁護士所属する弁護士会地域管轄する高等検察庁検事その地域地方検察庁検事正、 ④ 対象弁護士所属する弁護士地域管轄する地方裁判所地域簡易裁判所、⑤ 対象弁護士所属する弁護士地域管轄する地方検察庁地域各区検察庁上席検察官 並びに⑥ 日本司法支援センターM1から6まで掲げる事項通知すること要する(会則懲戒公告五条)。 

9公表制度 

日弁連懲戒処分効力停止決定又はその効力停止決定取り消しとき」であって、相当と認められるときは(7)の①までに掲げる機関雑誌に掲載する事項を公表することができる。