
懲戒請求者 堀鉄平弁護士 東京 32770 弁護士法人Martial Arts
懲戒請求者代理人 北周士弁護士 東京 35705 法律事務所アルシエン
被調査人 太田真也弁護士 東京 37657 神田のカメさん法律事務所
ザクっと
不貞行為をおこなった懲戒請求者を被調査人が不貞の相手女性の夫から損害賠償請求事件を受任。不貞慰謝料の金額が5000万円は高過ぎる。弁護士としての品位を失う非行であると、懲戒請求者は懲戒請求を仕事としている代理人弁護士に依頼して懲戒を申し立てた
令和5年東綱第314号
7107-0052 東京都港区赤坂2-12-17 Martial Arts タワー
懲戒請求者 堀 鉄平
懲戒請求者代理人弁護士 北周士
〒101-0032
東京都千代田区岩本町3-11-8 イワモトチョービル2階225号室 神田のカメさん法律事務所
被調查人 太田真也 (登録番号37657)
当委員会第1部会は、 頭書事案について調査を終了したので、 審議の上、以下 のとおり議決する。
被調査人につき、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
第1 事案の概要
事実及び理由
本件は、被調査人が、懲戒請求者と交際関係にあった女性の夫からの依頼を受けて、懲戒請求者に対し、5000万円という高額な不貞慰謝料の請求をしたこと等が弁護士としての品位を失うべき非行に該当するとして懲戒請求されたものである。
第2 前提事実
1 懲戒請求者は、第一東京弁護士会所属の弁護士であるが、HORIJUKU株式会社の代表取締役であり(甲8)、 堀塾と称する不動産投資塾を運営 する他、ユーチューブでの動画配信等を行っている (甲9, 10)。
2 懲戒請求者は、令和3年10月27日頃から同4年1月頃まで、●●(以下●● という。)と少なくとも2回の性的な関係をもった。
3 ●●の夫である▲▲(以下▲▲という)は、令和5年2月24日、被調査人に対し、 懲戒請求者を相手方とする慰謝料請求事件を委任し、 内容証明作成について11万円、訴訟(第1審) 着手金について33万円、成功報酬について得られた金額の11% (いずれも消費税相当額込み) とする弁護士委任契約 (乙14) を締結した。
4 被調査人は、▲▲の代理人として、令和5年3月16日、懲戒請求者に対し、懲戒請求者と●●との不貞関係について 「懲戒請求者が積極的なアプローチをし、●●の酩酊状態に乗じた強引な性行為により始まったもの」と主張しで慰謝料5000万円を請求する旨の通知書(以下「本件通知書」という。) を送付した(甲1)。本件通知書には、 末尾に以下の記載がある。
「貴職が誠意ある対応をなされないときには、先日来、世間を賑わせている馬奈木源太郎弁護士の事件を参考にして、同様に、訴訟や懲戒請求等の法的な手段をとらざるをえなくなることを付言いたします。」 本件通知書の送付を受けて懲戒請求者代理人である北周士弁護士が被調査人に架電したところ、 被調査人は 5000万円に絶対拘るわけではない、 本件通知書の「事件を参考に」の具体的な内容としては、訴訟提起時に記者 会見を行う予定であるなどと述べた (甲2の1、2)。
5 令和5年9月12日、▲▲と●●は離婚した(甲5)。
6 令和5年10月5日、被調査人は、▲▲の代理人として、懲戒請求者を被告 として、金5000万円の慰謝料の支払を求める訴訟を東京地方裁判所に提起した(以下「本件訴訟」という。)。不貞行為の態様については、本件通知書と同様の主張をした。
そして、同日、被調査人は、▲▲の代理人として、第一東京弁護士会に対し、懲戒請求者について懲戒請求をした (乙1)。 さらに、被調査人は、同年12月17日、●●の代理人としても、第一東京弁護士会に対し、懲戒請求者について懲戒請求をした(乙11)
7 被調査人は、令和6年1月16日、不貞慰謝料の金額5000万円が相当であるとの主張を根拠付けるものとして、以下の主張を本件訴訟の第2準備書面に記載した(甲12)。
「弁護士と妻が不貞行為をした際に夫が被る精神的苦痛の程度については、個人差もあるとはいえ、少なくとも不貞行為をした弁護士の男性器を枝切りバサミで切断したくなる程度の著しい精神的苦痛を受けることが、過去の刑事事件において実証されている」る。
続けて「不貞行為をした弁護士の男性器を枝切りバサミで切断したくなる程度の著しい精神的苦痛」とは不貞行為をした弁護士に後遺障害等級第9級程度の後遺障害を与えたくなる程度の精神的苦痛であり、かかる精神的苦痛を慰謝するに足りる金額を金銭的に評価すると、後遺障害第9級の後遺障 害を受けた場合に発生する慰謝料及び後遺障害による逸失利益相当額ということになるとして、5302万2550円を不貞慰謝料の相当な額として主張した。
なお、これに先立ち、被調査人は、本懲戒請求事案 (以下「本件事案」という。)における令和5年12月25日付け答弁書にも、上記記載及び主張と同様の記載をした (丙1)。
8 東京地方裁判所は、 令和6年12月23日、本件訴訟について、▲▲の懲戒請求者に対する請求を慰謝料200万円の限度で認容する判決を言い渡した(Z17)。
第3 懲戒請求事由の要旨
1 懲戒請求事由 1
被調査人は、不貞慰謝料の相場等について必要かつ可能な調査を怠り、懲戒請求者に対し、合理的な不貞慰謝料を遙かに超過する5000万円を請求した。これは弁護士職務基本規程第37条第1項、第2項に違反する。
2 懲戒請求事由2
被調査人は、懲戒請求者に対し、本件通知書をもって、懲戒請求者が誠意ある対応をしない場合には、「世間を賑わせている馬奈木源太郎弁護士の事例を参考にして」 法的手段をとる旨通知し、懲戒請求者代理人との電話で、具体的には記者会見を行う旨を告知した。これは弁護士職務基本規程第5条、同第70条、同第71条に違反する。
3 懲戒請求事由3
被調査人は、不貞慰謝料として5000万円を請求する訴訟を提起するにあたり、依頼者である▲▲に対し、5000万円が認容される可能性があるか否かについて何らの説明をせず、5000万円を基準に弁護士報酬を算定した可能性がある。これは弁護士職務基本規程第29条第1項、 第3項に違反する。
4 懲戒請求事由4
被調査人は、本件訴訟の準備書面(甲12)及び本件事案の答弁書において、▲▲ において発生した精神的苦痛の程度は、不貞相手である弁護士の男性器を切り落としたい程度の精神的苦痛である旨の記載をした。 同記載は、不貞慰謝料の算出をするにあたり必要な記載ではなく、懲戒請求者からすると準備書面に記載されているような身体的危害を加えられるのではないかという恐れを抱かせるものである。これは弁護士職務基本規程第5条、第14 条、第70条、第71条に違反する。
第4 被調査人の答弁及び反論の要旨
1 懲戒請求事由1について
慰謝料の金額とは、被害者が被った精神的苦痛を慰謝するに足りる金額と被害者側が納得し得る金額であることから、被害者として請求する金額自体は、金銭的相場による拘束を受けるものではない。
弁護士と妻が不貞行為をした際に、夫が被る精神的な苦痛の程度については、少なくとも不貞行為をした弁護士の男性器を枝切りバサミで切断したくなる程度の著しい精神的苦痛を受けることが、 過去の刑事事件において実証されている。 「不貞行為をした弁護士の男性器を枝切りバサミで切断したく なる程度の著しい精神的苦痛」とは、不貞行為をした弁護士に後遺障害等級第9級程度の後遺障害を与えたくなる程度の精神的苦痛であり、かかる精神的苦痛を慰謝するに足りる金額を金銭的に評価すると、後遺障害第9級の後遺障害を受けた場合に発生する慰謝料及び後遺障害による逸失利益相当額 ということになり、5302万2550円は不貞慰謝料として相当な額であり、被調査人が5000万円の不貞慰謝料を請求したことは不当ではない。
2 懲戒請求事由2について
本件通知書の記載は、 同種事案を参考にして、 今後起こりうる可能性のある事情を示したに過ぎない。
実際、被調査人において記者会見をするまでもなく、週刊文春オンライン の記事になっており (乙12)、この点からも訴訟提起後に起こりうる事情を示したものに過ぎない。
3 懲戒請求事由3について
被調査人に相談する前に他の弁護士2名ほどに相談しており、 その際、不同意性交に該当するのであれば、1回について800万円から1000万円であると説明を受けており、 また、訴訟において、不同意性交が認め られた場合の相場、不同意性交が認められなかった場合の相場についても既に説明を受けていた。
被調査人は、▲▲の最低でも3000万円を請求したいとの希望に基づき、 5000万円を請求する場合の印紙額を説明するとともに、 実際に予想される認容額を踏まえてもの手元に最低100万円以上は残るようにしたいとの希望も考慮して委任契約を締結しており、▲▲に対して適切な説明をした。 被調査人は、▲▲ との委任契約に基づき、本件通知書発送により11万円、 本件訴訟提起により33万円(いずれも消費税相当額込み)を受領しており、 5000万円を基準とした着手金を受領していない。
4 懲戒請求事由4について
本件訴訟の準備書面及び本件事案の答弁書の記載は、委任契約時に聞いた▲▲ の気持ちを書面において言語化し、 法的理論として昇華させたものである。
第5 証拠の標目
別紙証拠目録記載のとおり
第6 当委員会第1部会の認定した事実及び判断
1 証拠によれば、前提事実及び以下の各事実が認められる (乙13)。
(1)●●は、令和4年10月、警察において事情聴取を受け、 警察官から懲戒請求者と●●との間で2回以上の不貞行為があったと説明を受けた。
(2)は、●●が懲戒請求者から不同意性交をされたものと受け止め、 被調人の前に2名の弁護士に相談し、不同意性交の場合は1回につき800 万円から1000万円の慰謝料が認められる可能性があるとの回答を受けた。
(3) ▲▲は、被調査人から懲戒請求者に対し請求する希望額を聞かれて5000万円でお願いしたいと述べ、その場合の印紙額を予想される認容額から差し引いても100万円は手元に残るよう着手金と成功報酬の額を決めて被調査人との委任契約を締結した。
(4) ▲▲は、被調査人を代理人として令和5年10月5日に本件訴訟を提起したが、被調査人又はが記者会見を行ったとは認められない。 他方、同年 11月23日、本件訴訟の訴状の一部を画像として添付し、懲戒請求者にも取材したうえで懲戒請求者と の不貞行為とその後のトラブルについて報道する記事がweb雑誌に掲載された(乙12)。
2 懲戒請求事由1について
被調査人が、▲▲の代理人として、懲戒請求者に対し、本件通知書及び本件訴訟において、 不貞慰謝料として5000万円を請求した事実は認められる。 この請求額が一般的な不貞慰謝料請求の相場を大きく超えるものである ことは否めない。 実際、認容額から弁護士報酬と印紙額を控除しても100 万円程度は残るようにしたいというの要望からすると、被調査人は、不真慰謝料請求の認容額を200万円程度であると予想していたことが窺われる。
しかしながら、相場を超える請求をすることが直ちに弁護士としての品を失うべき非行となるものではない。
また、被調査人は、懲戒請求者が●●の酩酊状態に乗じて強引に不同意性交したとの認識を前提としての要望に従って相場よりも高額の請求をしたものであると認められ、法令の調査を怠ったとは認められない。
したがって、懲戒請求事由1は認められない。
3 懲戒請求事由2について
被調査人が、本件通知書に懲戒請求者が誠意ある対応をしない場合には 「世間を賑わせている馬奈木源太郎弁護士の事例を参考にして」 法的手段をとる旨記載し、 具体的には記者会見を行う旨を電話で告知した事実は認められる。
被調査人は、被害者の記者会見によって社会から非難を浴びた馬奈木弁護士の例を持ち出して相場より高額の請求をしようとしたものであると窺われる。
しかしながら、 ●●の主張のみを明らかな事実であると誤認させるような不当な記者会見を行うと述べたものではなく、記者会見を行う予定であると述べたことが紛争当事者間における交渉の手段として合理性を欠く不当な手段だったとまでは言えないから、 弁護士としての品位を失うべき非行とは認められない。
したがって、懲戒請求事由2は認められない。
4 懲戒請求事由3について
被調査人は▲▲との弁護士委任契約 (14) において、内容証明郵便の送村と交渉について11万円、 訴訟 (第1審) の着手金について33万円、 成功報酬について得られた金額の11% (いずれも消費税相当額を含む。)と合意した事実が認められる。
旧日本弁護士連合会報酬等基準では、経済的利益が5000万円の場合の 着手金標準額(消費税抜き) は219万円(=5000万円×3%+69万 円)であり、報酬金標準額(消費税抜き)は「得られた経済的利益」× 6% +138万円であるので、 被調査人が、5000万円を基準としての弁護士報酬を算定したとは認められない。
したがって、懲戒請求事由3は認められない。
5 懲戒請求事由4について
被調査人が、本件訴訟の準備書面(甲12) 及び本件事案の答弁書において、▲▲において発生した精神的苦痛の程度は、不貞相手である弁護士の男性器を切り落としたい程度の精神的苦痛である旨の記載をした事実は認められる。
かかる記載は、その対象とされた懲戒請求者からすると、身体的危害を加えることを暗示すると感じられる不穏当なものであり、 高額慰謝料を請求する理由として合理的なものでもない。
もっとも、被調査人としてはあくまで高額慰謝料を請求する理由として 記載したものであって懲戒請求者を畏怖させる目的で記載したとは認められないこと、実際に何らかの危害を加えるような他の兆候などは窺えず、懲戒請求者が畏怖を覚えたような事情も認められないことなどからすると、品位を失うべき非行に該当するとまでは言えない。
したがって、懲戒請求事由4は認められない。
よって、主文のとおり議決する。
令和8年5月15日 東京弁護士会綱紀委員会第1部会
(馬奈木事件 当会の記事より参照)
引用朝日https://www.asahi.com/articles/ASV262F5JV26UTIL00ZM.html
東京電力福島第1原発事故の避難者らが国に損害賠償を求めた集団訴訟の代理人として知られる馬奈木厳太郎弁護士が1日、依頼者に性的関係を迫るなどのセクハラを続けていたことをインターネット上の文書で公表し、謝罪した。https://nordot.app/1003641762379546624 共同
演劇や映画界のハラスメント問題に取り組んできた馬奈木厳太郎(まなぎいずたろう)弁護士(47)が1日、裁判で代理人を務めた依頼者に「セクハラ」をしたと、自身のブログで明らかにした。「被害相談を受けてきた者として、被害者の信頼を裏切った」と謝罪した。 ブログによると、馬奈木氏は数年来の知り合いだった相手に好意を抱き、相手も好意を寄せていると思い込んで、体に触れたほか、体の部位に言及したり性的な関係を迫ったりするメッセージを送った。相手からは拒まれたが、「依頼を受けていた裁判の対応にまで言及して、追い込んでしまった」という。 昨年末に相手から弁護士会に懲戒請求が出されたことで、苦しみを知ったと告白。「卑劣な、人として許されない行為で、深く謝罪します」とした。 ■原発訴訟の事務局長も 今回の公表は「被害を救済すべき弁護士が被害を生じさせた」ことを踏まえて決めたと説明した。今後はハラスメント講習の講師などは行わないという。 馬奈木氏は原発事故をめぐる避難者訴訟の弁護団事務局長も務めていたが、昨年12月に「体調不良」を理由に退任を申し出ていた。
https://www.asahi.com/articles/ASR3171SHR31UTIL030.html 朝日
馬奈木厳太郎 まなぎいずたろう 登録番号43229 第二東京弁護士会
現在の事務所 くほんぶつ法律事務所 東京都世田谷区奥沢7-16-15
