金払わんやつはタヒね!」とツイートした弁護士(大阪)が戒告処分になったかを考える。


橋本太地(弁護士・あなたのみかた法律事務所)

@kojin_syugi

大阪弁護士会の戒告について 3月1日付で大阪弁護士会は私に対し、「金払わん奴はタヒね」等の発言が品位を害するとし、戒告としました。 日弁連への審査請求に向けて、現在代理人と方針策定中です。 取り急ぎ、ご報告いたします

読売新聞 3月5日付

死ねを意味する「タヒね」投稿、弁護士を戒告…依頼者と着手金トラブル

 大阪弁護士会の男性弁護士(34)が、ツイッターで依頼者に対し「死ね」を意味する隠語を投稿したとして、同会から戒告の懲戒処分を受けていたことがわかった。処分は1日付。

引用 読売 https://www.yomiuri.co.jp/national/20210305-OYT1T50120/

橋本弁護士のツイート

 

① 弁護士費用を踏み倒す奴はタヒね!

② 金払うつもりないなら法律事務所来るな。

③ 弁護士に金払わなくて平気な奴は人殺しと同じだよ。

④ 金払わん奴はタヒね!

⑤ 金を払わない依頼者に殺された弁護士は数知れず。

⑥ 正規の金が払えない言うなら法テラス行きなさい。

⑦ 大陰唇暦?

 

弁護士自治を考える会

確かに弁護士のSNSとしては品が無いツイートです。金払わない依頼者がいたとしても弁護士なのだから法的に処理すればよいことであり、「タヒね」とツイートする必要は無いと思います。依頼者、消費者全般に対する侮蔑、屈辱と取られても仕方がありません。このツイートを見て、良くやったと言うのは弁護士くらいでしょう。

本来、この程度の品が無いツイートをSNSに投稿したというだけでは処分されません。

当会には弁護士懲戒請求の棄却された議決書があります。弁護士の暴言、心ない発言理由をして懲戒請求申立で「天皇はチンポコだ!」とツイートした新潟の弁護士に懲戒の申立がありましたが棄却でした。「家族団欒!片腹痛いわ!」と準備書面に書いた二弁の女性弁護士は日弁連異議で「懲戒相当」となりましたが二弁懲戒委員会で棄却でした。

なぜ、棄却になったか、「天皇は・・・」のケースは直ぐに削除、綱紀委員会は弁護士業務と関係ないものであるかと棄却、二弁の女性弁護士は、懲戒の代理人に二弁副会長、派閥(全友会)の会長を揃え、懲戒委員長は他にいた委員長を派閥の実力者の懲戒委員長に挿げ替えた。ここまでやって棄却です。他にも離婚調停の席で相手に対し「テメエ」とか「シャブ中に相続権は無い」と言った弁護士への懲戒は棄却されています。

しかし、懲戒の議事録には反省と謝罪の言葉があった。

ここが大事です。謝罪と反省の態度がある場合、弁護士という商売柄、情状酌量で処分はできないということになり、懲戒の議決書には「弁護士としての品位を失うべき非行に該当するが、被調査人は謝罪して反省の態度を見せていることから処分するまでには至らない」こう書かれます。

また処分にならないためには日頃から会務、派閥の雑用、弁護士会主催のゴルフ大会に参加し、飲み会でのヨイショが必要です。特に大阪弁護士会は派閥で運用されていますから、派閥の実力者を代理人に就け謝罪すればこの程度の懲戒事由では処分はおそらくなかったでしょう。

処分するならやってみろ!はダメ

橋本弁護士は抵抗したのではないでしょうか。謝罪などなく私のどこに処分される理由があるのかと。謝罪がなければ反省もないということです。

懲戒請求者が弁護士の場合

一般人が懲戒請求者の場合はなかなか処分が取れません。弁護士が懲戒請求者の場合、処分になる場合がかなりあります。特に弁護士に対する誹謗中傷、暴言は確実に処分になります。相手方当事者への暴言も弁護士が懲戒請求者や代理人になったものは処分になります。

 

謝罪、反省は3回チャンスあり

① これは処分になるなと感じたら、懲戒請求の1回目の答弁書に懲戒請求者が書いてきた処分理由の反論し最後に謝罪を述べておく。

② 綱紀委員会の呼び出し期日に謝罪の言葉と反省の態度をみせる

③ 綱紀委員会の議決で「懲戒相当」が出た場合、代理人を弁護士会の実力者に変更し懲戒委員会の呼び出し期日に謝罪と反省の態度を見せる。

こうやれば、処分になることはほぼないでしょう。ただ処分は助かったとしても一生、綱紀委員には頭が上がらない。どこかで会えばあの時はセンセイに助けていただいてという態度が必要になるかもしれません。

審査請求で処分取消になるか

橋本弁護士は戒告の処分は不当でありと日弁連に審査請求を行うとのこと、大阪弁護士会の判断は間違っていると主張していくとの事。

処分取消になる確率は年間100件の処分があり審査請求で処分取消になるのは年間1件か2件

確立は1%か2%です。

、処分変更の業務停止3月が2月に業務停止1月が戒告になるケースの方が多く、処分取消の方がはるかに難しい。日弁連が謝罪、反省が無いものに懲戒事由が認められない、日弁連が大阪弁護士会が間違っているという判断を出すのは至難の業

「戒告」が処分取消になったのは以下(2000年以降)敬称略

 澤田雄二 栃木  2015年6月30日 戒告 

           2017年4月11日 処分取消

https://jlfmt.com/2017/08/13/31409/

② 西山司朗 香川   2016年4月13日  戒告

            2017年10月20日 処分取消

https://jlfmt.com/2017/12/24/31582/

③ 伊達俊二 二弁   2016年5月23日  戒告

            2018年4月13日  取消 

https://jlfmt.com/2018/06/06/31814/

④ 宮崎好廣 一弁   2017年2月6日  戒告

            2018年4月10日 取消

https://jlfmt.com/2018/07/12/31864/

⑤ 内海隆幸 一弁   2017年2月7日  戒告

            2018年4月13日 取消

https://jlfmt.com/2018/07/13/31865/

⑥ 中村和洋 大阪  2017年8月1日  戒告

          2018年11月13日 処分取消

⑦ 佐藤隆志   神奈川   2018年4月26日  戒告

               2019年6月11日  処分取消

⑧ 井筒壱  大阪     2018年10月2日 戒告

              2019年6月11日 処分取消 

⑨ 棚瀬孝雄  東京   2013年 12月24日  戒告

             2015年  3月5日 処分取消

⑩ 小笠原忠彦 山梨   2019年2月5日 戒告

             2020年7月14日 取消   2020年9月号 

⑪ 小林芳郎 東京   2019年8月28日   戒告 2019年11月号

            2020年10月15日  取消 2020年12月号  

https://jlfmt.com/wp-admin/post.php?post=45445&action=edit

 

処分取消になった弁護士はベテラン弁護士、元弁護士会長、派閥幹部、労働弁護団幹部、元裁判官だけです、若い弁護士の暴言の処分取消はありません。忖度をしてもらうだけの実績がないものは無理。

タイミングが悪い。

2020年度日弁連の副会長15名のうち筆頭の副会長は大阪弁護士会会長でもある川下清弁護士です。日弁連会長より年上の副会長は川下弁護士だけです。

2020年大阪は16件の処分者を出しました。過去最高でした、また横領容疑で逮捕者を3名出しています。2020年大阪弁護士会の弁護士は、「着手金取って事件処理せず」、「依頼者に返す預り金を横領」3名。そして「金払わんやつはタヒね」と依頼者、焦眉者を侮辱したのです。これでは日弁連筆頭副会長のメンツ丸潰れです。日弁連で大阪はなにやってるんだ!といわれているでしょう。

「弁護士に金払わなくて平気な奴は人殺しと同じだよ。」とツイート、これは「依頼者に金払わなくて平気な奴は人殺しと同じだよの間違いでしょう

大阪弁護士会の綱紀委員会、懲戒委員会は大阪の弁護士で構成されています。審査請求をする日弁連懲戒委員は全国のベテラン弁護士、東京高検の検察官や高裁判事、新聞社論説委員等で懲戒委員会が構成されています。ここで「タヒねは言論、表現の自由だ!」といってもおそらく通用しないでしょう。

20年ほど前なら「戒告」なんぞ蚊にさされたもんだという弁護士もいましたが、今は戒告でもちょっとは痛くなっております。「官報の処分公告」、「自由と正義」、「大阪弁護士会会報」に処分が公告として掲載されます。

すべてネットで検索できるようになっています。依頼者は弁護士を選ぶ時にはネットの評判を参考にする時代です。

弁護士会によって違いますが、弁護士会主催の相談会、行政の相談会は3年の出禁となります、(奈良5年)法テラスは業務停止でようやく1年~3年の出禁です。そして、もう派閥の幹部、弁護士会の会長、副会長になれません。当然日弁連会長の途も閉ざされました。

最近は会社の顧問、社外取締役も懲戒処分歴を参考にします。行政機関の監査役、第三者委員にもなれないでしょう。だから何としても所属弁護士会の審査のうちに床に頭こすりつけて土下座してでも何とか処分は無しという弁護士がいるのです。

日弁連の弁護士懲戒処分の公表制度では「戒告」は実名報道以外は日弁連が問合せをした人に通知しません、大阪弁護士会と大阪司法記者クラブの取り決めでは「戒告」は実名報道をしないという協定もあるようです。弁護士会が処分を出した時は記者クラブに公表するという約束があります。報道するかしないかは各社の判断です。

しかし、橋本弁護士は官報公告の前に自分で名乗りでました。今やネットの時代、橋本太地弁護士と検索すれば「金払わんやつはタヒね」がヒットするでしょう。これを見てあなたの事務所に依頼者が増えるでしょうか?

そしてカンパ集めて審査請求をするのは他の弁護士からもいかがなものと思われます。止めましょう。処分をくらって反省がないどころかカンパ集めて弁護士会、日弁連に反抗するなどとんでもないことです。

日弁連の審査請求で処分取消になってもどこも報道しません。自由と正義に掲載されるだけです。(当会はすべて掲載しています。)審査請求で棄却までの期間はほぼ1年です。「裁決の公告」として官報と自由と正義に掲載されます。

あなたが弁護士として業界に残る唯一の道は審査請求の申立をしても構いませんが、申立書にこの度の件では世間を騒がせて申し訳ないと委員に謝罪し、ツイッターのアカウントを停止し反省の態度をみせることでしょう。そして2~3年は一派閥の雑務、会務を黙ってこなすことです。

今、処分を受けてキレて弁護士会に反抗してもなんにもならんゾ・・・と思います。

あくまでも個人の感想ですが

2021年弁護士 今年の逮捕者・有罪判決

日弁連懲戒委員会 委員名簿 (2020年11月)

弁護士の品の無いツイート

『弁護士のツイート』(1)弁護士の誹謗中傷、品の無いツイートは懲戒処分になりません。